オリンポスの女神 Mark22016年12月30日 23時33分

ようやく、今年も仕事納め、となった。
昨日は疲れちゃったから、爆睡しちゃって、貴重な時間が睡眠に消えた。

このところ、ちゃんと写真撮ってないな。
今日は少し時間があるし、いつもの定点観測、行ってみよう。

この時期にこの森に来ると、もうすっかり落葉している。
わずかに、モミジの赤い葉が残る樹もあるけど
寂しい雰囲気は、冬の到来を感じざるを得ない。

ザクザクと、枯葉が砕ける音をさせながら
小高い丘を越えると、すこし開けた場所。
そして、小さなカフェがある。古民家カフェかな。

こんな所に、こんな場所が?
少し躊躇うが、営業中の様子だ。

ちょっと寒いし、少し暖かいものを。
店の中に入る。

お客の姿はない。
奥のテーブルにつくと
着物姿の女性がメニューらしきものを持ってやってきた。

「え〜、珈琲か何か暖かいもの、ありますか?」
「はい。当店では、そうしたものは扱っていません」
「へ?」
とその顔を見ると、どっかで見たような・・・・((;゚Д゚))

名札を見ると「野口」と書いてある。
あ、どこかで、え〜と・・・
「どうかされましたか?」静かに女性が尋ねるので
「野口さん、どこかで会いましたよね?」と逆に尋ねる。

「野口? いえ、ノクチです」
あ・・・あの子だ。
そう、去年、「特別な方のお店」であった子だ。
「皆さん、間違えるのです」
「たしか『麗香』のお店にお勤めだったんじゃ?」そうだよ、あそこで会ったんだ。
「お客様、レイカではありません。LEICAです。」同じやりとりしたわ、これ(´ヘ`;)

「いや〜。その節はどうも。たしか15mmのレンズを・・」
と話を続けるも、どうも少し気が晴れない雰囲気だ。

話題を変える。
「え、ここで何を?」
「今はこちらで働いています。なかなかお客様がいらっしゃらなくて。」
「そうですか。やはりココもレンズ屋さんなんですか?」

「今は、お給料に見合った働きをしなければと思っています」
伏し目がちにお話ししてるけど、全然、話噛み合ってないわ。

「お給料?やはりこういうお店だと、場所も場所だけに、大変ですよね」
こんな所で、商売なんて、どういうマーケティングしてるんだろう。

「ワタクシの使命は、費用対効果。お客様が満足する画質を提供する事ですわ」
変な会話になってきたぞ。
「お客様は、ワタクシに興味をお持ちですか?」
なんと、単刀直入。配偶者がいるPROのおじさんになんという誘い文句だ。

「え、まあ、き、綺麗な方だなと思いますけど」
あの時見た、あの黒髪は、窓から差す光りに今も輝いている。

手にしていたフォトブックを開いて見せる。
「単焦点、42.5mm、F1.2。Nokt-というのは「夜」を意味する言葉ですわ」
なんだか妖艶だぞ。
「は、はい。綺麗な写真ですね。こんなレンズで君を撮影したら、素敵かもね」
「ええ、「夜」も、期待にお答えします」ま、単刀直入ぢゃないかっ。(たぶん夜の撮影の意味ね)
こ、これは、まさかの愛田人子・・・愛人のお誘いじゃないのか? 

困ったぞ、こんな誘い、受けた事がない。
「いっそ、結婚しませんか?」おおお、剛速球キター。
「ど、どういう事ですか?また唐突に。お、おじさん、勘違いしちゃうよ(^_^;)」
PROのおじさんにも出来る事と出来ない事はある。

「いえ、契約という名の結婚です。
 お客様は、必要な費用を提供し、ワタクシはお客様の満足を提供します」
ん?どっかで聞いたような台詞。 まさか某TブーSのガッキーのドラマで聞いたやうな??

「いや、ちょっと、む、ボクにはムリです」ヒラマサくんよろしく
カバンと股間を押さえつつ、慌てて店を出る。

出口から外に出るときに『麗香の店 密林支店』と書いてあった気がしたけど
一目散に、先ほど来た道を引き返す。これじゃ、写真どころじゃなかった。

ちょっと道を外れてしまったのか、また里山エリアに来てしまった。
少し嫌な予感がする。もう誰にも会わない様に、帰ろう。

と・・・少し行くと
「そこのおぬしっ」まさか、くも爺じゃって言わないだろうな?

やばいこの声、聞いた事がある。
足早に立ち去ろうとすると、また声が。
「わしじゃ」ていうか、確認したく無いんですけど。

サッサッと歩く私を、あっと言う間に抜き去ると
その背中には「瑞光」の文字。し、志熊老師?

「し、志熊老師?」声を掛けても、黙々と前を歩いていく。
え、声を掛けたんじゃないのかいっ。抜き去っても先に行くってあなた。
「お、おお。誰じゃ」誰って、疲れるな、この人。

「おお、お前か。いつぞやか・・忘れた」わすれたんかいっ。
「ええ、レンズをお布施と交換したモノです」
「そんな事もあったかいな(遠い目)」でも、どうでもよさげです。

「今日はな、いい話があるぞ」懐に手を入れて、もぞもぞしている。
「や、いいです。今日は。さっき、変なお店で(ゴニョゴニョ)・・」

老師の目が光る。なにかを悟った目だ。
「おぬし、あの「麗香」の店に行ったな」断言するかの様な口ぶりで、つぶやく。
「・・・」
「我が兄も、日頃から「近づいてはならぬ」と言っている店じゃ」
「いや、危ない所でした。とても綺麗な子でしたから」
「そ・こ・が・クセものじゃ。危うくワシも・・・」
急にフェイドアウトとは、じいさん絶対あの店に行ったな?

「以前30mmのレンズをお布施と交換したと思うが新作があってな。」話そらしたな。
「いや、30mmはもう、F2.8があるので大丈夫です(^_^;)」
「なんだ、ツレナイ奴じゃな。」

あれ、今日はしつこくないぞ。
「それより、凄い噂を聞いた」
「なんですか?」
「知りたいか?」
「知りたいです」
・・・・・・
「で?」
「ん、なんじゃ?」
「いや、だから、噂って」
「おお、そうか。今日の酒の肴を考えておった」喰えない人だよ、相変わらず。

急に真顔になって、話はじめる。
「このワシでもな、最近は少し手が震えるんじゃ」
「そうなんですか。カメラの撮影とか大変ですよね」
「うん。酒を飲まないとな、なかなか手の震えが止まらん」て、あんたアル中でしょ。

「それがな・・・そんな震えをピタリと止める長玉があるそうじゃ」
「アル中の震えをピタりと止めるなんて、凄いですね」
「ば、ばっかもーん」おお、出た、波平風。

「ちがうぞ、ちがうぞ。これまでに無い、神の技という事じゃよ」
「それはどこに行けば?」
「わからぬ。ワシの知っているのは、そこまでじゃ。一度震えを止めてみたいのぉ」
と少し寂しげに、老師は去っていった。今日は、諦めが早くて良かったよ。

さて、いらん時間を潰しちゃった。帰ろ。
て・・・周りを見渡すと、霧が。

寒い所に暖かい空気が流れ込んで来たのかな。
思いの外、歩速が落ちるし、前が見えないや。

気がつくと、青い湖のほとりに出た。
静かに聞こえる音、何? シャッター音?

上品な、感じ。
私のE-M1とは、根本的に違う感じだ。

霧の中から、突然、カメラを下げた女性が現れた。
「はっ」
「おっ」
お互いに驚く。そりゃ霧の中だもん。

「驚かせて、ゴメンなさい」意外にも丁寧な口調で彼女は告げた。
「い、いえ」その聡明な感じに、警戒心がほどける。

「写真撮影ですか?」つ、つまらん質問をしてしまった。
「え、ええ。新しいカメラで試し撮りに来たのだけど、天気が急に悪くなってしまって」
少し残念そうに、空を見上げる彼女。

「いや、そうですよね。私なんて、新しいカメラとかレンズを買うと、いつも雨ですw」
「今日はお天気と聞いていたのだけど、そろそろ上がらなくちゃだめかしら」
もう、諦めて帰る様子だ。

「私も、もう帰る所です。下までご一緒しましょう」
「ええ。」

青い色に白文字メーカー名のストラップ。
β版の機体なんだろうか、有名なカメラマンかもしれない。
そんな事を思いながら、彼女の背中を見て、後を付いていく。

そうだ、折角写真を撮りに来たんだから、彼女の後姿を拝借しよう。
カメラをカバンから出し、構える。

その間に、少し先をゆく彼女。
霧の中に消えゆく姿を捉える。少しISOを上げた方がいいかな。

フっ・・・彼女の姿が完全に消えた。
あ、あれ?どこに?
構えたカメラを下ろし、追いかける。

ど、どこにもいない。
道だと思っていた所は、細い堤のような場所。
周りは、湖じゃないか。

湖面に広がる大きな波紋。
え、まさか、落ちてしまったのか?
「おーい。大丈夫かっ」こんな所で遭難って、どうやって探したら?

5分経っても10分経っても、霧が晴れる様子がない。
まずい。何かあったら、どうしよう。
さっき会ったばかりの方だけど、どうすべきか?

時間が止まる。思考も止まる。途方に暮れるとはこういう事だ。

先ほどから見ている湖面に、気がつくと1筋の光りが見える。
その瞬間、青と白いベールに包まれた女性の姿が?

え、さっきの女性?
違う、あれ、どっかでお会いしましたよね(と私のゴーストが囁くのよ)。

「女を突き落としたのはお前か」霧の中で、幾筋かの光芒が光る。
「ち、違います。たぶん、湖に落ちゃたんじゃないですか?」どう言う言いがかりなんだ、この人。

少し疑う様な目でこちらをしばらく凝視すると、女神はこう言った。
「彼女を助けたいか?」
え、どういう事ですねん?
「いや、さっき知り合ったばかりですし。お名前も知りませんけど」
「構わぬ。助けるか助けないのか?」相変わらず、強引な女神?さまだよな〜。

「えっとー、彼女は無事なんですよね」
「そうじゃ」
「じゃ、後はよろしくお願いします。」
「お、おぬし、なんという奴じゃ、この人でなし」そりゃ酷い言われようだなあ。

「分かりましたよ。んで、どうすんですか」ちょっとふてくされた態度になっちゃったよ。
「うむ。お布施じゃな」ほうら来た。

「いや、お布施は、新しいカメラを買うために撮ってあるので、ご勘弁を」
「むむ。あのおなごがどうなっても良いのか?冷たい奴じゃ」
「いや、私がヘルプするのは良いですけど、なんでお布施なんですかね」
そりゃ、さっきの話じゃないけど、費用対効果は求めます。

「・・・アレは、私の分身じゃ。」なんで少し顔を赤らめますの?
「へ?」
「助けてやってくれ。きっとそなたの役に立つであろう」
いや、愛人の話はさっきお断りしたんで。
「いや、倫理的に大丈夫ですか?」いちおう、社会人なんで。
「うむ。この場合は、大丈夫じゃ」なんだか分からないけど、断言してるわ。

ほんじゃ、しょうが無いや。
「むう。助けるのは良いですけど、私からもお願いがあります」一応、下手にでておこう。
「うむ。」考えなくもなさげだ。
「そうだな。レンズがいいな。レンズをください」単刀直入に言ってみた。

しばらく目をつぶる。瞑想しているかの様子だが、閉じた瞼の下で、目が動いている様子。
レ、レム睡眠か? ね、寝てんの?
「25mmF1.2」女神は厳かにそして静かに語った。

「えっと、すいません。25mmのF1.4なら、パナのもってるんですよねえ」
「た、戯けもの。そして、浮気者め」また、雷鳴が轟く。
「いや、そんな。ずいぶん前ですよ、購入したの。」たしかE-30の頃だよ。

「なんにせよ「麗香」の手のモノじゃ」あ、この人もレイカって言ってるわ。
といいつつも、しばらく考えている様子だ。

「あの。手の震えが止まる、神の技をもつモノがあるとお聞きしました」
すると、目を大きく見開き、彼女はいう。
「そ、それをどこで?」知られてはいけないと言わんばかりに。

「ある方から聞きました」いちおう、情報源は伏せておかないと。
「志熊の奴め」唇を噛みしめながら、遠くを見る。バレてんな完全に。

「・・・残念ながら、在庫はない。」ざ、在庫っていいましたか?
「いや、じゃ噂は本当なんですね。」誘導尋問に掛かったな。

「ホントに、ないですか。1本も?」なければ、諦めろという事だよな。
「ちょっと待つが良い」おお、またREM睡眠状態。

「む。むむ。ある、その姿が1つだけ見えるぞ」
「え、あるんですか?」

「しかたがない。特別じゃぞ」良く分からないけど、成立したみたいだ。

「会員番号は34XXXXXX。そなたのお布施により、今より我が化身はすでに里に向かった。」
ありがたい、伏せ字にしてくれたな。今回も、個人情報は保護されている。
「彼女の名前は、マーク2と呼ぶがよい。」なんていうすばやさ。

「は、ありがたき幸せ」まあ、お布施払ったしな。
「そして、長きにも短きにもなる、神なる技を持つ鉾の様な硝子をおお」演出が過ぎるな。
湖を中心に、霧が渦巻いていく。女神の姿も消えていく。

「そ、そのレンズの名前は!!」思わず確認してみた。
「手ぶれ補正はどちらも使うがよいぃ〜」女神の声はかき消えていく。

霧が晴れ・・・周りを見渡すと、もう里に降りていた。どこに今までいたんだろう。
手には、黒く光る箱が。

ということで、マーク2到着の後
まさかのレンズがウチにきてしまいましたとさ。


登場カメラ
1)OM-D EM-1 MarkⅡ

登場レンズ
1)LEICA DG NOCTICRON 42.5mm(ノクチ)
2)SIGMA 30mm F1.4 DC DN MFT Contemporary(志熊老師の懐)
3)M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO(25mmのやつ)
4)M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(手の震えをおさる神の技レンズ)

※おまけ
TブーSのドラマ「逃げる恥だが役に立つ」パクリの件。
久々にカミさんとハマって見てたけど、9話の後半と最終回で、台無しにしちゃったよな〜。

◎HK「LIFE」で活躍していた星野源くん。紅白にも出るけど、ホント演技がよかった。
ガッキー(新垣結衣)も、こんな上手い女優さんだったと改めて認識。
ただ、最後の最後に脚本がorz。やっぱり、世相を反映しちゃったかな・・。

麗香の里 <オリンポスの女神 番外編>2015年12月12日 23時00分


新しいコンデジ DMC-LX100を持ち出し、久しぶりに森に来た。
しかし、あの湖には近づくまい。

あの湖への道とは逆の方向へ。
これならあの女神にも、そして怪しい老師に会うこともないだろう。
新しいカメラの試写に専念できる。

紅葉の季節も終わり、殆どが枯れ山。
撮るべき被写体はほとんどない。
ただ、静かな時間と空間がそこにある。

枯れ葉を踏みしめながら、奥へ進むと、小さな畑の中に鍬を振るう老人がいる。
黒い作務衣に身を包んだ、屈強な体躯の持ち主。

軽く会釈しながら、畑の横道を過ぎようとした時だ。
「そこのおぬし」まさか、くも爺じゃって言わないだろうな?

「は、私ですか?」と、その老人の顔を見ると、あの老師?
「少し、話さないか?」
「あ、お久し振りです」間違いない、あの人だ。

「ん?」キョトンとしている。憶えてないんだろうか?
良く見ると、少し老けた様な感じもある。そうか、それでボケたんだな(←失礼)。

「数ヶ月前に、お目に掛かりましたよね? ほら、60mmのレンズもこう」
といって、E-M1に装着した、SIGMA 60mmF2.8を見せてみる。

「ほほぅ」自分とそのレンズを物色するかの様に、目を細める。
黒い作務衣には、やはり「志熊」と書いてある。間違い無い、老師だ。

「シ・グ・マ・・・志熊さんですよね?」
「そうじゃ、志熊じゃが、なんじゃ?」なんだやっぱりそうじゃん。
「いや、今日はこちらにいらっしゃるとは。あれ「瑞光」て今日は書いてないですね」

老人は、おもむろに畑の方を向くと、また鍬を入れる。
「・・・」って、シカトかよっ。今日はツレナイんだな。
「それじゃ、失礼します・・・」写真撮りに戻ろヽ(`Д´)ノ

「そこのおぬし」踵を返した私を呼び止める、老人。
「え、なんですか?ちょっと、忙しいんで」
「老師と呼びなさい」← そこかいっ

「老師じゃ、志熊さんじゃない」
「はいはい、じゃ、志熊老師。なんでしょうか?」結局、話したいんじゃん。
振り返ると、また鍬作業に戻ってる。なんだ、この人。

鍬を振りながら、こちらを見ずに、つぶやく。
「おぬしが会ったのは、弟じゃな」
「お、弟?」
「そうじゃ、弟に違いない。調子のよい奴だったろうて」
「は、はい。人なつっこい感じでした」積極的に小三元売りに来たからな。
「うむ。」・・・って、話が先に進まんないなあ。

あれ?
黒い作務衣の背中に、金色でなにか文字が浮き出ている。
「か、観音?」
この方は、どこかの高僧だろうか。こりゃ、失礼な事をしたかな。

「これか?」背中の文字を首をグイと回してみる仕草をして、ニヤリと笑う老師。
「ええ、どこかのお寺の名前でしょうか?」
「ま、そういうことかな」く、喰えない人だな。

「じゃ、先を急ぐので」立ち去ろうとすると、再び老師が声を掛けてくる。
「おぬしに、薦めたいモノがあってな」
て、またレンズを紹介するつもりでしょ。

「いや、ゴメンなさい。持ち合わせはないので」早々に退散だ。
「ほれ、これはな 20mm F1.4 DG HSMといってな。作例もすばらしいぞ」
「おおっ、これはっ・・・」広角域で、このすばらしい写真は・・・
「どうじゃ、ほれ、1本も2本も変わらんて。どうじゃ、1本?」
作務衣の中からレンズを取り出す。それって、ホカホカしてますやん。

しかし、レンズの黒い鏡胴を見ると、マウントが違います。
「そ、それって、マウントがキ◎ノンですよね?」
「いかにも。だから背中に「観音」と書いておるのじゃ」 それ、そのためですかい。

「いや、グラグラきますけど、私のカメラじゃ使えないのです。」
「そうか。では、このカメラはどうじゃ?」カメラも作務衣から?
「いや、結構です。さすがに、これ以上カメラは増やせないので」
「そうか、残念じゃな」

寂しげに農作業に戻る老師。すいません、折角ですが。
「ありがとうございました。失礼します。」
なんでお礼を言うのかわからないけど、撮影に戻ります。

「おぬし。」え、まだ何か?
「・・・そのカメラ・・・」私のDMC-LX100を凝視しています。
「はあ、新しいコンデジです。結構いいですよ」

「良いか、この先の奥には決して行ってはならぬ。」
「はい?」
「よいな、忠告したぞ。・・・麗香とは、クワバラクワバラ」

鍬を肩に背負うと、ぶつぶつ言いながら、畑の奥に消えていく老師。
「ちょ、ちょっと、どういう事ですか」呼び止めるのに、待ってはくれない。
ああ、行っちゃったよ。

ま、いいか。好きそうなレンズだったけど、マウントが違うんだから、ムリだよ。
さ、コンデジ撮影に戻ろう。

枯れ葉に覆われた道を進む。
沢を渡り、奥に進むと、急に開けてしまった。

ん? なんだ、里山だと思ったら、京都みたいな所に出たぞ。
地図にこんな場所があったんだろうか?
やはり、散策してみるものだな。

(写真は、京都花見小路。あくまで、イメージです)

小径を入ると、町屋風の建物が並ぶ。
「麗香」と書いてある店に目が止まる。
れいか?かな。これ何屋さん?

怖々中に入ってみる。
「いらっしゃいませ」
そこには、欧州系の美女がいた。なんと美麗な、しかも流暢な日本語で。

「あ、すいません。お店開いてますよね。」
「はい。Hallo」ど、ドイツ語?
「おお、Guten Tag, Fräulein」知ってる単語はこれだけだもんね。

「ここは何屋さん?」つまらない質問をしてしまった。
「麗香」て書いてあるんだから、舞妓さんとかいるのかしら。

絶世の美女は、LX100をチラリと見ると、どうぞあちらへと促す。
店の奥には、黒光りしたレンズとカメラ群が。是非、あちらを見てみたい。
どのカメラにも赤いマークが入っている。

「いえ、こちらは特別な方のコーナーです。」こ、断られた。
「え、見るだけでもダメですか?」
慇懃無礼じゃないか。買えないかもしれないけど、見せてよ。

「お客様は、あちらにお進みください」
有無を言わせない鉄壁な態度。しかたない、言われた通りに・・・。

少し低くなった潜り戸から、奥に進むと、黒髪の女性が現れた。

「いらっしゃいませ、ご主人さま」
「はいぃ?」いや、そんな店ですかいっ?
「いや、ここ何屋さんですの?」
彼女の着物には「野口」と名札に書いてある。

「お客様の希望の品物をご用意するお店です」野口さんがそう続ける。

「いや、野口さんね。そう言われても」
「・・・ノグチではありません。ノクチです」え、濁らないのね。
「ノグチさんじゃないのか、そりゃ失礼。」
「ええ、皆さん間違えるのです。」
「じゃ、このお店「麗香」て名前ですけど、何かそれと関係が?」謎は深まるばかりだ。

少し笑みを浮かべると、小さな声で私に告げる。
「お客様、レイカではありません。LEICAです」((;゚Д゚)) 変換ミスですの?

「んで?」
「お見受けした所、その【百式】をお持ちですので
 本日は、別の者が担当とさせて頂きますわ」って、何がですの?

しずしずと奥にノクチさんが消えると、その後、少し小柄な女性が現れた。

「お帰りなさいませ、ご主人さまっ」アニメ声ですけど、そういう店?
「いや、帰ってきた訳じゃなんですけど」・・・今日は登場人物が多いな
「百式、ご購入おめでとうございま〜す」あ、ありがとうございます。

「本日のお奨めは、これでぇ〜す」ガラスケースの上に、銀と黒のレンズが2本。
「あ、やっぱり、カメラ屋さんなんだね」
「ちがいま〜っす。」違うんかい。

「欲しいものを用意してくれる店なんでしょ」
「そうでございま〜すっ」つ、疲れるな。

「これ、何ミリのレンズなの?」
「15mm、F1.7ですっ。」
「15mmかあ、微妙な画角だね。もう少し他はないの?」
「14mm、20mmとありますけど、この店では扱ってませーんっ」
ニコニコしながら応対する彼女。

「いまなら、キャンペーン中ですっ」来た、またお布施の話か。
「はいはい、お布施でしょ。現金持ってないよ」もう百式(LX100)で無くなったよ(´ヘ`;)

「コンデジを1台、募集してまっす」コンデジ?
「はい。里子のモノなら、大歓迎です」
「サトコ?そんなメーカーあったけ?」
「違いまっす。リコと呼びますっ」て、リコーですかい?
「GRなら、ワンプライス買取中。詳しくはWebで検索。」
そう言いながら、指を動かすんじゃない。

そうか、15mmだけど、F1.7って魅力だな。
しかも、このお店だと14と20mmは手に入らないのか。
LX100も手に入れた事だし、彼女にGRを渡す事にした。


「お買い上げ、ありがとうございます。ご主人さま」
「じゃ、レンズを下さい」
「今なら、13:30までに店舗で受け取る様、手配いたしま〜す」
ちょ、ちょっと待って、GRは? レンズは?
店の奥に消えていく彼女の名札には「デイジー」と書いてありました。

しばらく、湖と反対側の里山にも近づかない事にしましたとさ。


※今回、この話は、相当フィクションです。

登場カメラ
1)Panasonic DMC-LX100(百式)
2)RICOH GR(里子:リコーね)

登場レンズ
1)SIGMA 20mm F1.4 DG HSM
2)LEICA DG NOCTICRON 42.5mm(ノクチ)
3)LEICA DG SUMMILUX 15mm(デイジー(爆))

ちょっと、苦しいストーリだったかな。(リクエストに応えましたw)

オリンポスの女神 その22015年06月17日 21時11分


(写真は、蓼科・女神湖。 あくまで、イメージです)

久しぶりに、この森に来た。
残念ながら修理中のメイン機は持ち出せなかったが
フラグシップの名を持つ銘機と優秀なレンズは健在だ。

光と影をファインダーにおさめながら、奥へと進む。
湖畔に差し掛かった頃、三脚を準備した時だ。
「!」 
ほんの一瞬、掴んでいたハズのストラップが
指の間からすり抜けていく。 
スローモーションにも見えた瞬間、 
カメラとレンズは、その深淵の中にユラユラと沈んでいく。 

「しっ、しまった。またやってしまったぞ。」
ガックリと膝をつき、その深き蒼い淵を覗いても、もう見つからない。 
撮影中止以前に、大切な道具をまた失ってしまった。
 
時間が止まる。 思考も止まった。 途方に暮れるとはこういう事だ。

湖面から視線を上げると、湖面に1筋の光が見える。 
その瞬間、青と白いベールに包まれた女神が立っていた。 

神々しいその姿に思わず立ち上がる。 
ああ、あの女神は!?
数年前に出会った、彼女ではなかったか?

「どこの誰じゃ、こんな場所に不法投棄をする、不埒者は!」
暗雲立ち込め、雷鳴が轟く。辺りは曇天と化していた。

「ふ、不法投棄なんてっ。カメラを落としてしまったんです」
彼女の逆鱗に触れたのだろうか、恐れおののきながら、説明する。

「お前か、あれを落とした者は」
「は、はい。すいません。不注意で」

その瞬間、曇天の合間から、幾筋かの光芒が湖面を照らし始めた。
「そうか。ちと、演出が過ぎた様だ」さっきの雷は演出ですかい?

「大切なカメラとレンズを落としてしまったんです。
 できたら、なんとか拾いたいんですが」というと意外な言葉が、彼女の口からでる。

「次は・・松のカメラ、竹のカメラ、梅のカメラ・・・と続くと思っておろう?」
「いや、そんな事は。兎に角、自分のカメラを」・・・心を見透かされた様だ。

「残念ながら、そなたのカメラは、もう誰も手が届かぬ所にいってしまった」
「そこをなんとか?お力を貸してください」

しばらく、視線を湖面に落とし、佇む女神。
「では、物々交換なら、応じて進ぜよう」
「ゑ、なんですの、それ??」

少し驚いた表情で、こちらを見る女神。
まじまじと見ると、やはり神々しく美しい。
ただ、ちょっと言葉がアレだけど。

「物々交換じゃ。価値の同じモノとモノを交換する儀式ぞ」
儀式っていったい。

「じゃ、落としたカメラとレンズに匹敵するモノ・・・を頂けるのですか?」
すると、彼女の手には、いつの間にか新しいレンズが現れていた。

「そ、そのレンズは?」黒く光る胴鏡に青とシルバーのライン。
「小型ながら、最も新しい、ガラス玉の化身ぞ。」
て、それ、7-14mmPROなんじゃね?

「じゃ、いいです、それでお願いします♫」
渡りに船だ。E-5と12-60mmSWDを失うのは仕方ないが
なんとかあのレンズを手に入れたい。

「良いですとは、何事ぞ・・・まあ、良い。しかし、それでは、価値と価値が合わぬ」
「え、カメラとレンズでは、交換できないのですか?」
「少々、そなたものは、古きモノであった。価値が下がっておろうの」

ちっ、よく分かってるな。何か手はないだろうか?

「レンズを。」
「え?」
「レンズをもう1本、投じるのじゃ」
「どういう事でしょうか?」
「価値と価値が同じモノでなければ、ダメと申したであろう」
つまり、さっき落としたE-5じゃ不足ということか。しっかりしてるな。

「じゃあ、12mmLimitedBlackという小型レンズでよろしいでしょうか?」
「よかろう」
女神の承認を得たので、湖面に向けて、黒い胴鏡を投げ込む。
放物線を描き、落ちた先に波紋が広がり、沈んで行く。
ていうか、これ不法投棄じゃ?

「女神さま、そろそろ、そのレンズを受け賜れますか?」たぶん日本語が間違ってるかも。
「慌てるでない。そなたの写真機なるものは、修理中ではないのか?」

なんで、それ知ってます?

「なぜ、その事をご存じで?」
「なんでも、わかっておる。そなたの会員番号は34XXXXXXじゃ。
 個人情報だから、伏せ字にしておいたぞ。
誰も周りにいませんが・・・微妙な気遣いありがとうございます。
「そうそう、「ぷれみあむ」という階級になった様だな。贅沢なやつめ」少し微笑む彼女。
それにしても、ありとあらゆる情報を一瞬にして手に入れられる様だ。

「いや、ですが、カメラも明後日には帰って来る予定ですし、そのレンズを!」
こうなったら、懇願してでも、持ち帰りたい。

しかし、厳しい答えが待っていた。
「ならぬ。あと10日ほど待つが良い」
そんな待つの?
「10日もですか?」えー。

「それと・・・」続ける女神。
「え、まだなにか?」言い足りない様子だ。

「・・・お布施が足りぬ。」
「へ?」

「まだ、そなたのモノと私のガラス玉の価値が合わぬ。依って、お布施をするが良い」
「今ですか、持ち合わせがないんです」お布施って、お布施ですよね?
「そんな下界の下世話な話はせぬ。10日後に用意しておきなさい」

光の中に消えていく、彼女。
やはり、以前、沼?いや湖で会った、女神ではなかろうか。
あるいは夢だったのか?

10日後、果たして、あのレンズは来るというのか?
お布施って、お金って事?

カメラを失い、レンズを失い、半信半疑だが
これ以上撮影もできない。撤収だ。帰ろう。

身支度を調え、帰路につく。
と・・・湖の端に差し掛かった時
ひとりの男が現れた。

武道家の様な、あるいは作務衣の様な出で立ち。
屈強な体つき、大砲レンズを使いこなすカメラマンの様にも見える。
しかし、その胴着には「瑞光」と書かれていた。ず、ずいこうですか?

「そこのおぬし」雲爺じゃって言わないだろうね?
「は、私ですか?」
「少し、話さないか?」
人なつこい感じで、話かけてきます。

「ええ、良いですけど、もう、帰る所なんです」
「そう言うな。欲しいレンズが手に入らず、ふて腐っておろう」

「な、なんでその事を?」
まさか、女神さまと同じ超常的な方?

「ほほほっ。なんでもお見通しじゃ」
それ、説明になってませんけど。

「その胴着、『瑞光』と書いてますけど、お名前ですか?」

そういえば、「瑞光寺」って聞いた事がある。そこの住職じゃないだろうか?
瑞光とは「吉兆を表す光」の事だ。彼も神の化身か?

「今は、「志熊」と呼ぶが良い」
「えっへっ? シグマ?」
「ばっかもーん。『老師』、ろ・お・し、じゃ」・・・ろ、老師って?

「じゃ、シグマ老師、さん?」
「そうじゃ」
「『瑞光』さんじゃないんですか?」
「今は、本業と違うのじゃ。ええい、細かい事を気にするなっ」はい、分かりましたっ。

「で、御用向きはなんでしょうか?」
「うむ。おぬしに、薦めたいモノがあってな」
て、なんですの?

目の前に、小さな黒い胴鏡が3つ現れる。
それって、手品ですかい?

「ここに、19mm、30mm、60mmという名のガラス玉がある」
「ほうほう。」これは、単焦点レンズだな。

「それぞれが違う画角・・小三元的なモノであるが、どれが好みか?」
「いや、好みと言われても、ズームレンズな人ですし、単焦点はイッパイ持ってるしい」
言い訳がましく言うと、グイと近づきながら、老師が言う。

「はっきりせん奴じゃ」
売り言葉に買い言葉。それならば・・・
「いや、実は、30mmのレンズは持ってます。
 19mmはちょっと、自分的には使える範囲が少ない。
 M.ZD60mmMacroは持ってますが、マクロレンズなので、頂けるなら60mmです!」

「うむ。」といいながら、目をつぶる老師。
しばらく待つ。何も言わない。どうしたいっ?

「老師・・ん、で?」
「ん?なんじゃ?」寝てたんか〜い。

「で、レンズを貰えるんですか?」
・・・・
「た、戯けもの!レンズを貰えるですか?と、どこまでお前は図々しいのじゃ」
ぎゃ、逆ギレですの? 話し方が波平さん的だな。

「いや、すいません。そういう事じゃないんですね」あーびっくりすんなコノ人たち。

しかし、ニヤリと笑って、老師が囁く。
「だが、今なら、ポイントが使えるぞ」
な、なんだそりゃ?

「ぽ?ポイント?」
「そうじゃ、60mmが欲しければ、ポイントを使うが良いぞ」

ポイントって、ヨド◎シか何かの?
頭の中で、グルグル考えていると、老師の姿が消えて行く。
気がつくと霧が立ちこめて来ている。

「それでも、おまえはお布施が必要じゃ。ポイントだと足りぬからな。
 キチンと、お布施をするのじゃぞ〜〜」とフェイドアウト。

気がつくと、白い箱を手にもっていました。
箱には「SIGMA 60mm F2.8 DN」と書いてありました。

この湖には、しばらく近づかない事に致します。

(今回のブログは、殆どががフィクションです(爆))