令和四年元旦 ― 2022年01月01日 07時00分
久々に弦交換。 ― 2022年01月03日 17時01分
ギターの弦の交換、いつやったかな?と遡ってみたら
なんと20年の10月以来やってませんでした(^_^;)
ボサノバギターのレッスンは、ワークショップ形式なので不定期。
某感染症の影響もあって、19年の秋からスタートしたものの
実質中抜けの期間がトータル1年近くあり
折角スタートしたのに、やや盛り下がっていたのも事実。
ギター購入から1年経って弦交換したのが、20年10月なので1年以上経過。
もはや交換手順を忘れる程に。
当時動画も撮ったはずが、消してしまった様なので
ブックマークしていた動画を参考に、再トライしました。
ブリッジ側の結び方は、アコギと同じ(ブリッジピンじゃないタイプ)。
ウクレレもこのやり方にしてるので間違えないんけど、備忘録のため、撮影。
前回はやらなかった。ブリッジ下側の傷防止の養生を実施。
これ、アコギじゃなきゃいらない気がするんですが・・・。
(ボサギはナイロン弦(1〜3)。アコギは鉄弦ですから、切り飛ばした時の養生かな?)
スロッテッド・ヘッドなんで、弦の巻き方を忘れちゃう。
1弦と6弦は、軸の上を弦が通過してから、下から穴を通し、弦を上げて
外に向かって弦をくぐらせて、コマを穴に入れてから、巻き巻き。
輪っかを通した弦が、ペグを回して下から延びるの弦に押さえ込まれる形に、ヘッド外側に巻く。
2,3,4,5弦は、軸の上の弦が通過してから、下から穴を通し。弦を上げて
逆に、内に向かって弦をくぐらせて、コマを穴に入れてから、巻き巻き。
輪っかを通した弦が、ペグを回して下から延びるの弦に押さえ込まれる形に、ヘッド中央側に巻く。
言葉で書くと、ほんと分かりにくい。
自分でも動画を撮ってみたけど、自分の手が邪魔で弦が隠れてしまう。
解説してくれる動画は、いろいろなやり方がありますが、スロッテッドは手間ですねえ。
ボサギ6本の弦交換とギターの清掃(オレンジオイル)を合わせると、小一時間はすぐに過ぎます。
1〜3弦は、ダダリオ・EJ-45。
4〜6弦は、オーガスティンの赤パッケージ。
(今回は、4弦はちゃんとオーガスティンで張りました)
ようやく、ボサギが終了。
今度は、ウクレレの方に。
・・・あれ、オイハタの三女、2年位、弦替えてなかったよぉ((;゚Д゚))
こちらは手慣れたモノなので、掃除を入れて20分位で完了。
1〜3弦はOihataさんにお願いして組合わせて購入したストックから・・・
1弦:0.0244 → Oihata Light Gauge 4弦のGを 1弦のAに。
2弦:0.0259 ← Oihata Mediumと同じ
3弦:0.0291 → Oihata Light Gauge 3弦のC と同じ
で、
4弦:Low-G(今回は、オーガスティンの黒パッケージの4弦=D弦)
としました。どちらも音がクリアになって、久々に新しい弦の音に変わりました。
<おまけ>
以前、チェックしてもらった、Oihataボディの下側のクラック。
塗装面だけだと思うのだけど、乾燥のためか、ちょっと目立つかな。
そろそろ、オーバーホールも考えたいと思います。
オリンポスの女神 いや女将? ― 2022年01月22日 20時00分
今年も1ヶ月が過ぎた。
しばし落ち着いた感染症騒ぎも、再熱か。
強毒なウィルスは人を殺めてしまうから残れない。
やがては弱毒化し人と共存していく。
これまでの風邪も同じだ。
自然の摂理に反した行為が、収束を遠ざけている。
いや、遠ざけたい人達もいるのか。
しばらくすると、また不要不急の外出は控えろ、となるのだろう。
同じ事がこの2年続いている。まだしばらく続くのだろう。
家に籠もり過ぎるのも体に悪い。
気分転換に車で出かける。
この車に乗り換えてから、遠出が出来てない理由の1つが
自粛でもあるのだ。
しばらく走らせて行くと、丘陵地帯。
以前はカメラを持って散策したエリア。
里山や神社もあった静謐な空間は、再開発が進んだ。
自然を残しつつではあるが、そこには地形を利用した街ができていた。
少し狭いワインディングロードは、丘と丘の間の尾根か。
しばらく行くと、大きなショッピングモールが現れた。
再開発は、ほぼ終わったらしい。
グルりと周り込むと、少し離れた駐車場にクルマを置いた。
中心エリアだと車列ができていたし、昔の名残を眺めながら歩くのもよし。
車をおいた場所と中心のエリアは、デッキで結ばれている。
地形で言えば、丘と丘の間をデッキでつないだのだろう。
中心エリアがプレオープンだから、まだ植栽や外構は手が入って無い所がある。
できるだけ以前の形を残しているのだろうか。
一部遊歩道らしき残骸が残っている。
こちらのエリアに車を停める人は少ない。
家族連れならお父さんに文句がでるだろう。
1人ぶらぶら以前の面影を探しながら、遠くに見えるモールを目指す。
樹齢の古い大木は伐採を逃れた様だ。アスファルトで覆われないだけ
環境には配慮がされた様だ。
その中には植栽をいじる方もいる。
春に向けての整備だろうか。
おもわず「お疲れ様です」とすれ違い様に声を掛けた。
返事はなかった。仕事に集中されているのだろう。
行き過ぎた時、後ろから声が掛かる。
「そこのおぬしっ」なつかしい、くも爺のような声。
あ、ちなみにアマゾンプライムで、見れるんだよね「空から日本を見てみよう」。
2010年頃だから、4Kじゃないのがザンネンだけど。
振り返ると、藍色の作業着とも作務衣とも言えぬ出で立ち。
柔道の様な黒帯に白い文字で「志熊」と書いてある。
しっ、志熊老師? ていうか、いつものパターンだよね?
「は、はい?」
「今、声を掛けたじゃろ?」
「は、はい。ま、挨拶をしただけです」無視したんじゃなかったのか。
グイと一歩前に出てくる。
「うむ、どっかで見た顔じゃの」
そりゃそうでしょ、あなたがあの人なら何度も会ってます。おまけにご兄弟にも。
「え、そうですかぁ(フェイドアウト)」
絡まれたらヤバイ人だから、早く行かなくちゃ。
今日の目的は、ぶらぶらしに来ただけだし。
「この辺も随分変わったのぉ」
立ち去る自分の背中越しに、まだ話掛けてくる。・・・大きな独り言だろうか。
ちらと後ろを振り返ると、花壇を構成するブロックの上に腰を降ろしている。
レ、レンズを取り出してる?
「レンズは、要りませんよっ、しかもNIK◎Nだなんてっ」
押し売りを始めようとしてんな。そもそもウチのはフォーサーズ機ですから。
「なあにを言っておるんじゃ」
近くにあった袋から水筒を出して、レンズキャップを開けて注ぐ。
な、なにしとんだ、防塵防滴祭りかよっ!?
見ると、レンズの中にホカホカのお茶が注ぎ込まれていく。
な、なんとマグカップか?
「そ、それ、マグカップなんですか?」
「ん?おうよ」
横目で一瞥をよこしながら、レンズをグイと傾ける。ノドが大きく上下に動く。
それ、メ◎カリに出てましたよね、絶対。
「おほう、やっぱり体が温まるのお、焼酎は」ぷはあと白い息が立ち上る。
さ、酒なんですが、仕事中に。
懐からガサガサ、ビニール袋を出している。
ん、それスルメでしょ、絶対。
「さ、酒飲んで、大丈夫なんですか?」ダメだ、いつものパターンじゃん。
「こんな寒いのにシラフで園芸なんぞできるか?まあ、誰も来んて」
スルメの片足をクチからはみ出しながら、くちゃくちゃしてる。
居たよね、電車にもこういうオジサン(昭和感)。
「いや、お仕事中ですよね。現場監督にも叱られちゃいますよ」
「わしを叱れる者なんぞ、おらんて」スルメの足が吸い込まれていく。
「作業中ですよね。高齢者の就職もこのご時世、厳しいでしょ」
「現場かんとくぅ?」首を傾げて、また一口グイとタンブラーを煽る。
聞いてないなこの人。
「首になっちゃても知らないですよ」後で現場事務所に行ってチクちゃうぞ。
大きな袖に両腕をツッコんで、どこか遠くを眺めてる。
「じゃ、失礼します」さ、あっち行こう。
「チクっても無駄じゃぞ」な、なんで分かるだ、て、テレパスだな。
「いや、誰にも何も言いませんよ」これ以上関わりたくない。
「ここはわしの管理区域じゃ。元はと言えば、爺さんから譲り受けたの山があってな。
畑に使ってたが、立ち退きしたのじゃよ・・・」
再開発の余波がここにも。
「まあ、庭いじりだけは好きにしていいとな。それも契約じゃ」
「そうだったんですね。それは失礼しました。住み慣れた場所から移るなんて、酷いですね」
この方なりにご苦労されたんだ。
「今はな、ホレその先のタワーマンションの最上階でな、いちばんイイ部屋でな」
ニカッと微笑み、ガッと👍を立てた。それ、藁しべ長者ですやん。
「じゃ、お元気で」そろそろ次に行かないと、読者もこのサイト閉じちゃうぞ。
「まあ、待つのじゃ」まだ何かあるんですの?
「いや、先を急ぎますので」このクダリだけで、スレ終わっちゃうぞ。
「ロシアから良い出物が入ってな」ろ、露西亜?
「特殊なルートで手に入れたブツだが、お主は興味があろうて」ど、どゆこと。
「そ、それ薬じゃないですよね! 買いませんよ、要りませんっ」
あの畑、きっと「大きな麻」でも栽培していたに違いないっ。
このままじゃシンジケートに連れていかれて、カスピ海にでも沈められちゃうかもしんないぞ。
「カメラに興味があるな」キッパリと静かに告げる。て、テレパスだな。やっぱり。
「え、ええ、まあ。なぜ、それを? テレパスなんですか?」
「ワシのタンブラーをレンズと見誤ったからじゃ」ああ、そーでした。
「露西亜の出玉じゃ、通称『ロシアの黒い瞳』」黒い瞳?
「ええい。分からんヤツじゃな。ホレ、実際に見せんとな」
体を揺すりながら、懐に手を突っ込んでいる。ん、それ、股間を直してませんか?
ようやく懐からホカホカした黒いレンズを取り出した。え?シ◎マじゃないじゃん。
「・・・HELIOS 44M-4 f2、58mm。価格はだいたい1万円じゃ」と言いながら
レンズ型タンブラーの横にレンズを立てる。
「いわゆる、オールドレンズじゃな。写りは、こんな具合じゃ」
今度は袋からA4サイズの写真を撮りだして、タンブラーとレンズの間に立てる。
「こ、これは」思いの外、綺麗じゃないか。おもわず言葉が漏れる。
「存外にシャープぢゃろうて」
老師はニヤニヤとしながら、フォーサーズ機らしきカメラにレンズを装着。
いや、あなた、どこからカメラを出したんですかい。
「ホレ、こうやってな。ん?絞れんな」どうも不具合らしい。
「老師、オールドレンズと言って、変なモノ売らないでくださいよ」
すると、カッと目を開き、飛沫を飛ばしながら、一喝が。
「バッカモーン、モーン、モーン、モーン・・」辺りの樹々にこだまが響く。
し、叱られちゃったよ、久々に。
「これはな、寒いからグリスがな。それとココにピンがあるじゃろ」2人でレンズを覗き込む。
「マウントのピンをちょいと細工しないとな。兎に角、ちゃんと写る良品じゃぞ」
そ、それ、ブッキーなワタクシにはムズイです。
( ̄ー ̄)こんな顔をしてたら、老師が小さく「だめか?」と確認します。
「だめですね。値段と写りは破格でも、ブッキーな私にはムズイです」ゴメンナさい。
「そうか、ザンネンじゃな」今日は早めの引き下がりだな。
よかった、帰れる。いや、帰るんじゃない。
ごそごそと出したモノを片付けながら、老師がつぶやく。
「これから向こうに行くなら、麗華の店に行くと良い」
・・・ゑ? 今、麗華って言いました?
「麗華って、前は行っちゃいけないって言いませんでしたっけ?」
「ワシがそんなこと、いつ言ったか?」あれって志熊老師?それともお兄さんだっけ??
レンズ型タンブラも袋にしまう。それOM製ありませんか?
「それと・・」
「それと?」
「ま、行けば分かるて」終わるのかいっ。
そう言いながら、庭いじりに戻っていく老師。
「春にはな、この桜もまた咲くぞ。また見に来いよ」
後ろを向きながら軽く手を上げて去っていく老師。
その背中には、瑞光と書かれた金文字が輝いていた。
*************
だいぶ時間をとられた。
書いてる作者もどうしたものかと思ってただろう。
先を急ごう。
デッキを渡り、第一駐車場を抜け、ようやく建物の中へ。
今では広いショッピングモールだ。
中央は吹き抜け空間。
1階からも2階、3階の様子が見える。エスカレーターでつながる回廊風だ。
1階はブテックやセレクトショップ、あるいは雑貨屋さんで占められている。
エスカレーターに乗る前に、総合案内板を見る。楽器屋や本屋もある様だ。
3階に「麗華」の文字を見つけた。
まさか、あの店が残っていたのか?
それにしても奥の奥。
トイレとかある場所じゃないのかと思う位の奥にその店はあった。
現代風にアレンジされた入り口。
以前の和風の趣きは無い。白い壁に白い床。
正直言うと、天井のLEDは光の直進性が高いから、ローガンが進んだ目にまぶしいのよ。
お店に入る所で、1人の女性が現れた。
上下黒いスーツに、白いシャツ。金色のネームプレートは光って見えない。
ショートにレイヤーされた髪型は、小顔に映えて身長以上に背が高く見える。
「お待ちしておりました」どこかで見た姿。
そうだ、麗華の店かあの神社の?
「駐車場の方から、ご連絡がありました」
「ちゅ、駐車場?」車に何かあったか?
「庭園管理のモノからの連絡です」まさか志熊のオンジがもう報連相を?
「どうぞこちらへ」
眩しい白い店内に案内される。
店には商品も無く、サンプルもない。ある意味、未来感満載。
「感染症対策が厳しいので、手に取る商品は置いておりません」そうか、カタログ販売なのかな。
「それと、1ON1。ひとり1人で接客させて頂いております」ということはお客は1人なの?
「どうぞ、こちらへ」案内される席につく。こちらも白いテーブル。
意味のないアクリルシールドが机の真ん中に衝立られている。しかも天井まで。
そのためか、席につくと彼女はマスクを外した。
天井まであるんだから、マスクいらないハズだよね。
やはり何度か会った女性だ・・・。
「麗華の店、無くなったかと思ってました」なんとなく話題を振る。
「最小の規模で継続が決まりました。ただ『特別な方のコーナー』は今はありません」
飲食店だけでなく、いろいろなお店が立ち行かなくなってるんだろう。
まあ『特別な方のコーナ』は入れても貰えなかったからな、無くてもいいよ(←やっかみです)。
「以前からこちらで?」
「ええ。このお店が出来る前に異動の話がありましたが、このご時世です。
引続きお世話になっています」契約社員なんだろうか、厳しいだろうな。
話が湿っぽくなってきた。話題を変える。
「そうですか。やはりココもレンズ屋さんなんですか?」
「管理の者から、こちらにいらっしゃると連絡がありましたので、お待ちしておりました。
早速、ご説明を。モニターをご覧ください」テーブルを見ると映像が流れる。
なんだ、有機ディスプレイなのか。 志熊老師に強引にココに誘導されたわ、これ。
映し出されるラインナップ。
黒い胴鏡の数々。やはりレンズ屋さんなんだよね、ここ?
「ロシアのレンズじゃない、お薦めはあるんですか?」買わないと思うけど、聞いてみよう。
志熊老師とお話しするより、ずっといいよw
「ワタクシの使命は、費用対効果。お客様が満足する画質を提供する事ですわ」
「はい、わかります」分かんないけど、頑張ってるのね?
「これまでに体験した事の無い世界にお連れする事でもあるのです」
「そ、そうですか? 未体験ゾーンに連れてってくれると?」
「お客様は中・望遠のレンズはお持ちですか?」
「ええ、まあ。30mm、45mm、56mm、60mmもマクロも入れて数本。望遠もあるかな」
「まあ、いろいろ手をだしていらっしゃるのね」なんで、そこ下を向いてモジモジすんの?
「ま、女性には手を出せませんが、レンズは買えますからね、わっはは」下ネタかいっ。
言ってて恥ずかしくなり、暫し沈黙。
「お客様は、ワタ・・に興味をお持ちですか?」変な会話になってきたぞ。
アクリルのせいで良く聞こえないぞ。ワタクシって行った?今?
「え、まあ、き、綺麗な方だなと思いますけど」ロングもいいけど、ショートもいいよね。
「これをご覧下さい」モニターにサンプルが映し出される。
100-400mmの超望遠。そこには麗華の文字。前から欲しい1本だ。
それで撮影された白い鳥の群。ワタクシじゃなくて、ワタリドリって言ったのか(爆)
「いや、望遠はもってるし、テレコンもあるからな」俺の勘違いじゃん、恥ずかしい。
「それでは、こちらは如何でしょうか?」次は中望遠の領域だ。
フォーカスは明瞭、その向こうには溶ろける様なボケ。
昔もっていたあるレンズにも似た描写・・・。
「単焦点、42.5mm、F1.2。Nokt-(ノクト)というのは「夜」を意味する言葉ですわ」
なんだか妖艶だぞ。
「は、はい。綺麗な写真ですね。君がモデルになってくれるなら買ってもいいかな」
「ええ、「夜」も期待にお答えします。」
た、単刀直入ぢゃないかっ。(↑たぶん夜の撮影の意味ね)
こ、これは、まさか魔の誘惑なのか?
すっと顔を上げ、黒い瞳(←ロシアじゃないぞ)を真っ直ぐに私に向けた。ドキドキっ。
「今なら、取り寄せる事も可能ですわ」いつもより推しの強い姿勢だ。
「あ、じゃあ、まず商品を見させてもらうかな」やいやい言っちゃったよ。
「承知いたしました。商品を見てから、キャンセルもできますので」
アクリルの向こうの机に何やらキーを打つ様に手を動かす彼女。
タッチ式のキーボードか?
「もしかしたら・・・倉庫にあるかもしれません」
「じゃ携帯か何かに後で連絡してもらってもいいかな」
一度頭を冷やそう。数日経って気持ちが変わるかもしれないしね。
「この先に庭園がございますから、そちらでお待ち頂ければ、すぐにご連絡します」
テキパキと処理を行う。真面目だし丁寧だし、そこまで言うなら、庭園で待つか。
「この奥にございますから、真っ直ぐにお進みください」
店の玄関までおくって貰うと、彼女は深々と頭を下げた。
・・・や、まだ買ってないからね。
*************
屋上緑地化はどこでも割と進んでいる。ここもその1つだ。
芝生の先に、少し高めの樹木も植えられている。その先は見えない。
暫く行くと、樹々の内側には、小川というか、側溝で作られた水の流れがある。
その先には小さな鳥居と小さな社。
ゑ?
小さな看板に
「高千穂峰 御凜蓮神社」続けて、説明文が。
「この神社は2021年12月の本モール完成を機に現在の地に遷宮されました。云々」
とあった。
なるほど、これは、ラ◎ーナ川崎に「出雲大社」が鎮座してるのと同じだな。
元々、某社の工場に祭られていた神社をショッピングモール開発と同時に遷宮したアレだ。
流石に撤去するなんてバチ当たりだものね。まあ羽田の穴守稲荷の鳥居は、いろいろあって
あの場所にあるのだけど、不思議な事はあるものです。
あの神社、形を変えて残してくれたのだな。
となると小川は結界なのだな。
社は小さな池を模した円形の中に設置されている。
事ある毎に、お世話になった神社だ。手を合わせておこう。
小さな賽銭箱に、小銭を入れて、二礼二拍手。目をつぶる。
特に願い事はなし。ただタダ手を合わせる・・・とちょっと目眩が((;゚Д゚))
いかん、秋頃の季節の変わり目に出た、頭位性目眩だろうか。
思わず、鳥居の前に、ひざまずく。
轟々と耳鳴りがする。遠雷らしき音が聞こえた気がしたが、空耳だろう。
さっきまで大丈夫だったのに、突発性難聴かな?
良く見ると、周りも少し霧がある様な・・・。
確かに山間部だし、天気が悪くなってきたかも。
落ち着いたら、帰った方がいいな。そう自問自答している間に声がする。
「わらわを呼び寄せたのはお前か」いや、呼んでないですし、嫌な予感しかしません。
「ひざまずくとは、殊勝な心がけじゃ」いや、目眩がしてるだけです。
目の前に姿が見えてきた。ターミネーター風にひざまずく私の前には誰かの姿が。
良く凝らして見ると、き着物姿?
「あれ?女神さんじゃないんですね?」
黒い留め袖の様な和服姿に、襟元や帯は緑色。紙も結い上げている。
どこかで・・・見覚えがある様な・・・・考えるな感じるんだ。
「おお、おおう。もしかして、む、無残さま」鬼滅の無残様の女型?
「た、戯けものっがー」す、すいません。
「鬼に例えるとは何事じゃ」え、アニメ見てますよね?
「し、失礼しました。いつもなら洋装のドレス姿だと思っておりましたので」
どう見ても、和服姿だよね。
「何か勘違いしておる様だな」では、あなたは一体?
「御凜蓮神社の方ではないのですか?」あの女神さんもなんて言えばいいんだ。
「わらわは、遠い遠い縁者じゃ」親戚?関係者?変な人しかいないな。
「お主が呼んだから召喚されたのじゃ」いや、召喚してないし、10円入れただけです(ケチ)。
「いえいえ、ただ昔ここにあった神社にお世話になったので、御礼参りです。」
「御礼の割には、10円とはケチくさいのぉ」バレてました。
「ここも再開発されて、神社もなくなったと思っていました」話しを反らそう。
「うむ、あのまま遷宮もしなければ、関係者全員をとりXXしてやる所じゃった」やっぱ鬼ですよね!?
「ああ、小さい社でも残して頂いて良かったです」みんな、よかったね。
「ひざまずいてまでの願いとは何じゃ」だから、ひざまずいて無いんですってば。
「いえいえ、ちょっと目眩がしただけです。先ほどもレンズのお店で
高額商品を目にしましたから、ちょっとクラクラしちゃっただけです」
「この神社に遷宮して、かの大君は、お隠れになった」人の話、聞いてないな、この人も。
「え、やはり御神気が感じられないのはそういう事ですか?」コンクリートの社は寂しいよね。
「この神社を再興するためには、やはりお布施が必要じゃ」ほら、そう来たぞ。
「いや神社の再興は、やはり山の持ち主や権力者に言って頂かないと」
最近、給料が下がって、私も大変なんです。
さらにたたみ掛ける様に、女神いや女将は続ける。
「御凜蓮神社だけではない、四分乃三儀神社の更なる発展も必要じゃ」
4分の3?なんですの、それ。
「わらわの役目は、他の神社も潰さぬよう、それぞれにお布施を配り、持続可能とする事じゃ」
それ、SDGsを言ってます?
唐突に女将が叫ぶ。
「み、みえるぞ。」な、何がですか? アムロ・レイ? それともララアですか?
「今、東の方角から、黒い胴鏡が向かっておるぞ」さっき、現物を見たいって言ったレンズですね?
「それなら、お取り寄せして頂いています。まだ、買うか決めてませんが」
そう言った途端、少し厳しい目で一瞥された。鬼の方でしょ、ぜったい。
「おなごの心をもて遊んでおるな」はい?
「いや、在庫商品を確認して頂いています」だから商品を見ないとねって言ってるでしょ。
「あの子はな、美麗だが高嶺の華と扱われ、再就職もできず、この地に残った」
だったら正規社員にしてあげてください。
「気立ての良い子じゃが、なかなか売り上げが伸ばせぬ、クチベタでな」
だから営業職に向いてないんじゃ?適材適所が上司の勤めですやん。
「これ以上、もてあそぶでないぞ」この人も一方的じゃないか。
「いえいえ、商品を確認してからですから」この場はこれで納めて頂かないと。
しかし無残さま(←違うって)は諦めない。
「お主もずっと憧れであったであろう。わらわには分かる」いや、さっき会ったばかりですよ。
「ここにも、そこにも、あの事がブログに書かれておるぞ」
静かに瞑った瞼の下は、眼球が動いている。この人もレム睡眠検索名人か。
そして少し不敵に微笑むと、鬼の首を取ったかの様な事を言う。鬼が鬼の首を?
「それと・・・黒い板を手にいれておるな」黒い板?
「金色特典手札」それ、ゴールドポイントカードですか? 信用情報も入手可能らしいぞ。
「え、まあ、年末にですね。カードは増やしたくなかったけど、仕方なく。
ほら、PlayStation5のゲリラ販売は、このカードが無いと買えないんですよ。
アキバなら数百台あるのに田舎だと数十台ですからねえ。予約制にしてほしいなあ。」
「今なら、11%還元!」ドーン、雷鳴が響く。効果音は館内放送のスピーカーから?
「しかも90日間、無料で補償も付くぞよ」はいはい、入会時に確認しています。
「取り寄せはしてもらってますが、良い商品だっていうのは分かっていますよ。
でも、値段と品質は兎も角、なかなか手が出ない商品です。
ましてや、似た様なレンズがあるんです。45mm、56mm、60mm・・・」
「いろいろ手を出しておるな。この浮気者めがっ」いや、それレンズですから。
「いや、どれもコスパが高いモデルですからね。私もこの道はそこそこ長いですし」
「なんとモデルにも手をっ!」いや、人の話聞いてないでしょ。
「違いますって」
いつもの女神さんなら、カメラかレンズの一点集中で来るけど
この人、なかなか本題に入らないぞ。そろそろ帰ってくれないかな。
「まあ、イロイロ手を出すのは良い」え、いいんですね?
「あの子を今救わねば、もう永久(とわ)に会えぬかもしれぬぞ」
あの子の事は、その会社の事だから口出しできないけど
在庫も少なくなっているし、そもそもの商品がディスコンしたら?という事もあるな・・・。
「密林なら、4割3分7里。地図屋では4割4分3里。しかし、わらわなら、3割8分2里・・」
「それって負けてますよね。」算数くらいは分かります。
「しかし、金色特典は1割1分還元じゃ」それは知ってます。
「実質換算なら、4割4分9里の割引率じゃ」
人的コストも掛かってますし、あの子の給料もありますもんね。
ひざまずいた姿勢から、すっくと立ってこう告げた。
「できれば、もう少し御神力を頂けますか?
流石に金色特典まで付けて地図屋さんまでとは言いません」
一瞬怯む、無残さま(←無残じゃねえって)。
「く、くうう。ならば、これでどうじゃ。端数をドーンじゃ」
「え、そこまで?それならば、私もお布施ができるかと思います」
ああ、思い切っちゃったかな。
話が済んだとみえ、その女将はこう告げた。
「会員番号 XXXX下4桁 おぬしとの約定は成立した。」再び霧が立ちこめ、消えゆく女将。
「あ、もし、お名前は何と?」
「わらわか? わらわの事は『淀の大君』と呼ぶが良い」ヨドのオオキミ?ぃ?
その声を聞くか聞かない間にまに、後ろから声がした。振り返るとあの女性だった。
気がつくと、淀の大君の姿は無く、手元には白い明細書が残っていた。
*************
麗華のお店のあの子、わざわざ探しに来てくれた様だ。
「商品、在庫ありましたか? いつ来ます?」系列店から来るには数日かかるだろう。
「いえ、倉庫の奥にまだ、1点だけありましたわ」
小さな紙バッグを両手に持ち、こちらに渡してくれた。
渡す時には、これまで見せてくれなかった笑顔が。え、笑顔に弱いんだよ、オジさんは。
その後、白い紙を両手で手渡してくれた。名刺かな?
「何かございましたら、こちらへご連絡ください。」
そこには「松下 麗華」と書いてある。
ま、松下?結婚されたのか(意気消沈)
「ま、松下さん? け、結婚されたんですね」声のトーン、テンション下がってたでしょ。
「はい?」
「以前は、野口さんじゃなかったでしたか」
「ノクチですわ、皆、間違えるのです」このクダリ、無限ループだな。
「今は、母方の名前を名乗っております」は、母方?
「え?お母さんの?旧姓?」どゆこと。
「私、ドイツ人のクォーターですので、祖父の名前を使っておりました。
生まれも育ちも福島ですから。」あ、そうだったの?(いや、どういう事?)
「ノルマが達成しました。これで実家に戻る事ができます。ありがとうございました。」
ぺこりと頭を下げて、晴れやかな彼女。
「お。おう」なんだか分からないけど、良いことしたのかもしんない。
左手に白い明細書、右手には黒い箱。
気がついたら、1年以上振りのレンズ購入だった。
車に乗り、ショッピングモールを後にする。
これからは、むやみやたらに手を合わせに行くのは辞めよう。
特に、志熊老師にあった後は・・・
<おしまい>
※ このお話は、フィクションか、いま流行りのマルチバースの出来事です。
*************************************
このシリーズでも数回登場していたあの子。
ついに、我が家にやって来ました。
もともと私には、EP-2時代に買ったMZDの45mm(プロじゃないF1.8)もありますし
シグマのアート60mm持ちでもあります。マクロもZD50mやMZDの60mmもある。
焦点距離的にはカブリまくっている領域です。
シグマの56mmは描写も良く、価格も良かったので過去に逝った1本ですが
私のイメージでは、シグマは男ぽく、パナライカは女性ぽいイメージです。
(ええ、イメージですw)
なので、なかなかあの価格(元々22万円?)と この焦点距離は手が出せず
随分前から、憧れのレンズの1本なのでした。
1年ほど前に11万円台のアマゾンのセールを逃し、それ以降は12〜15万の間だったと思います。
最近では12万円代となり、Lマウントに行ってしまったパナの事ですから
OMになったオリンパスもどうなるか、本当に心配です。
なので、ノクチ42.5mmってディスコンしないよね?て少し思った次第。
昨年1年は、1台も1本もカメラもレンズも購入なし。
某写友(誰だか分かるね?)は、最近オールドレンズに凝ってますので
そのうち、単焦点祭りでも開催したいなとちょっと思い始めています。
少なくとも、写りは良いのは分かってるレンズ。
E-M1 Mark2との相性はまだ分かりませんが、撮るのが楽しみです。
まずは「オリンパスの女神」シリーズで、購入報告を。
ではでは。
★誤字脱字はそのうち直すかもしれません。脱稿に時間掛かり過ぎました(^_^;)
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